2013年5月16日木曜日

日本人留学生の数は本当に減っているのか?:実は日本人留学生数は増えている!?

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JB Press 2013.05.16(木)  村田 博信
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/37749

日本人留学生の数は本当に減っているのか?

 世間では日本人若者の内向き志向や留学生数の減少など悲観的な報道が目立ちますが、現実はそうではないようです。
 日本認定留学カウンセラー協会(JACSAC)代表幹事の星野達彦氏によると、
 「留学斡旋機関や大使館などが行う留学フェアをはじめとしたイベントの参加者が大幅に増えている」
とのことです。
 さらには多くの留学カウンセラーからも、ここ数年は現場レベルでも留学相談やイベントの参加者が増加したとの声がよく聞かれます。

■実は日本人の留学生数は増えている!?

 星野氏によると、
 「留学関連メディアでは広告主の出稿量が増えているところも珍しくなく、留学斡旋業界の景気が良くなっているとも言える」
とのこと。
 留学情報メディア業界大手の留学ジャーナルによると、2012年度に同社が手掛けた斡旋者数は3500人と前年比12%増。
 日本全体でも2012年の海外留学者数(短期の語学留学等を含む)は約20万3000人で前年比8.8%増となっています。
 これには、グローバル人材が求められているため、夏休みなどを利用して海外で学ぶ学生や、社員を語学学校等での研修に送り出す企業が増えているという背景が考えられます。

 では、なぜメディアによる報道と現実の状況に乖離があるのでしょうか。
 それは、文部科学省が毎年発表する日本人留学生数のデータにも原因がありそうです。
 まず、データが常に2年前のものであるため、タイムラグがあります。
 また、データの対象が高等教育機関への留学のみとなっているため、語学学校への留学などは含まれていません(ちなみに中国など国によっては語学目的留学の人数も留学者数にカウントされているところもあります)。

■データで見る留学生数の増加

 そうした短期の語学留学を含めると、ここ数年は日本人留学生数は増加傾向にあるというのが、以下のデータを踏まえた星野氏の見解です。

(1).大学のプログラム(短期留学含む)【出典:日本学生支援機構(JASSO)】

1万8570人(2004年)⇒ 2万3633人(2006年)⇒ 2万4508人(2008年)⇒ 2万8804人(2010年)

(2).アメリカへの英語留学【出典:US IIE Open Doors、Intensive English Program(IEP)】(参考:INSTITUTE OF INTERNATIONAL EDUCATION)

学生数:4953人(2009年)⇒ 4228人(2010年)⇒ 5502人(2011年)
滞在週合計:5万6283週(2009年)⇒ 4万572週(2010年)⇒ 6万3639週(2011年)

3).カナダへの英語留学【出典:Languages Canada(ワーキングホリデーやビザ不要の短期留学を含む統計データ)】

1万4657人(2009年)⇒ 1万5930人(2010年)⇒ 2万1069人(2011年)

4).日本のカナダ大使館主催の留学フェア参加者【出所:在日カナダ大使館】

1593人(2009年)⇒ 2134人(2010年)⇒ 2712人(2011年)⇒ 3643人(2012年)

(5).オーストラリアへの英語留学【出典:English Australia】

1万6221人(2009年)⇒ 1万8718人(2010年)⇒ 1万8888人(2011年)

■留学生数増加の背景

 こうした留学者数の増加には、グローバル人材が求められているという現状が大きく影響していますが、産官学の様々な取り組みも見逃せません。

★国の取り組み

 2010年菅直人内閣の時に作り閣議決定された「新成長戦略」に、2020年に日本人学生等の海外交流30万人を目指すことが明記されました。
 その流れで平成24年度には文科省などが送り出し留学の促進に下記のような予算を設けています。

●ショートビジット(3カ月未満の短期語学研修など)約10億円:6300人に月額8万円の支給
●短期留学(3カ月以上)約17億円:2280人(前年760人)に月額8万円の支給
●長期留学(1年以上)約4億円:200人(前年100人)に月額約9万~15万円と授業料の支給
●高校生の留学(1年間留学)1億2000万円:300人(前年50人)に40万円の支給

★自治体の取り組み(一部の紹介)

 東京都では、「次世代リーダー育成道場」事業として、2012年から2020年までに延べ3000人の都立高校生を海外留学させる計画を立て推進中です。
 また大阪府では、2012年から2015年までに1000人の高校生や大学生を海外留学や研修に送り出す事業に取り組んでいます。
 埼玉県や福岡県、佐賀県などでも海外の高校に留学する生徒を対象に10万~60万円程度の助成をしています。

■企業の取り組み

 企業によるグローバル人材育成については以前の掲載で紹介したとおりですが、(詳細は第9回、第10回参照)、採用の面でも留学経験者へのアプローチが活発になっています。

 世界最大の日英バイリンガル就職イベント「ボストンキャリアフォーラム」(ディスコ社主催)の参加企業数もここ数年右肩上がりに伸びており、2011年は171社だったのが2012年は190社ほどに増えています。

 また、経団連も2012年から「経団連グローバル人材育成スカラーシップ」を設け、指定大学の学生約30人に年間100万円(1人当たり)の奨学金を給付し始めました。

■大学の取り組み

 上記のように国や企業によるグローバル人材育成の強い要望を受けて、大学側でも東京大学が秋入学を検討し始めたり、多くの大学で海外留学プログラムなど制度の充実を図っています。
 また文科省のグローバル人材育成推進事業の採択を受けた42大学は、5カ年計画で留学者増加と具体的な数字目標を掲げて活動しています(詳細は第18回、第19回参照)。

■米英の政府による働きかけ

 日本人による高等機関への留学の減少が目立つアメリカは、積極的に日本人留学生の受け入れ表明をしています。
 少し前になりますが2010年11月に行われた日米首脳会談で、日本の留学生を積極的に増やすことが話し合われたり、当時のクリントン国務長官も日本からの留学生を促す発言をしています。
 また、英国政府の国際文化交流機関であるブリティッシュ・カウンシルは、日本を重要市場と捉え、日本人の留学動向についての調査も本格的に実施し始めました。

■グローバル人材輩出国への兆し

 短期の語学留学が増加傾向にあると述べましたが、語学留学生は修了後に海外大学へ進学する可能性の高い予備軍でもありますので、その数が増えているということは将来的に高等教育機関への留学が増えることにつながります。

 さらに、現在政府では大学入試に英語能力テストTOEFLを導入することを検討していますが、海外の大学進学に必要なTOEFLを受験させることで、海外留学を促進することは間違いないでしょう。
 またTOEFLで良いスコアを取るには付け焼き刃的な英語力では太刀打ちできず、実践的な能力が求められます。

 そのため“使える”英語を身につける学習スタイルのニーズが高まり、例えば高校時代にフィリピンなどへ費用対効果の高い短期語学留学をする学生が増える可能性も考えられます。

 “使える”英語を体得した学生が増えれば、それだけ海外留学を志す人数も増加するでしょう。
 グローバル競争が激しさを増す企業の要請によって、大学にグローバル人材を求める機運が高まり、政府が政策で後押しするという構造が動きつつあります。

 ここで大事なのはただ単に留学すれば何もしなくてもグローバル人材になれるという安易な考えを渡航者が抱かないように、留学斡旋会社や帰国後の受け入れ企業などが求められるグローバル人材像をきちんと提示し、留学先でどのように過ごすべきかをガイドする必要があります。

 せっかく留学者数が増えても彼らが社会で活躍できなければ、留学生増の機運に水を差すことになりかねません。
 持続的な潮流となるよう産官学が密な連携を取ることが求められます。






【気になる-Ⅴ】


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