2013年6月18日火曜日

スパコン世界一は中国の「天河二号」に:Intel製22nm世代のプロセサ

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●中国のスパコン「天河2号」


ウォールストリートジャーナル     2013年 6月 18日 11:05 JST
http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887323382204578552271377521726.html?mod=JWSJ_EditorsPicks

中国のスパコンが世界最速に―米インテル半導体を使用 

 17日発表された世界のスーパーコンピューターの計算速度ランキングを示す「TOP500」によると、中国のスパコンが米国から首位を奪還した。

 中国のスパコン「天河2号」は中国の国防科学技術大学が開発した。
 同スパコンは米テネシー州のオークリッジ国立研究所の「タイタン」を破って1位になった。

 米国の技術的優位性の後退にがっかりする前に、知っておいてほしいことがある。
 天河2号で主な計算機能は米国製なのだ。
 このスパコンには1万6000のノード(ネットワークへの接続ポイント)があり、それぞれが2個の米インテル製プロセッサー「Xeon Ivy Bridge」と3個の「Xeon Phi」を持ち、
 総CPUコアは312万となる。

 同スパコンは33.86ペタフロップス、つまり1秒間に3京3860兆回の計算ができる。
 ゼロがどのくらい並ぶか見てみると、33,860,000,000,000,000となる。
 これはペタフロップスが17.59のタイタンの倍近くの能力だ。
 タイタンのプロセッサーは56万640個で、うち26万1632個がエヌビディア製、残りはアドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)製だ。

 中国のスパコンがトップになったのはこれで2回目。
 ランク付けは年に2回行われる。
 中国が初めてトップになったのは2010年で、天津のスーパーコンピューター・センターの「天河1号A」だった。
 この時のペタフロップスは2.57だった。
 しかし、中国の初めての支配は短命に終わり、11年には富士通のスパコンに首位の座を奪われた。

 その後これまでは米国製がトップだった。
 1年前にはローレンス・リバモア国立研究所のIBM製「セコイア」が1位になった。
 今回は3位。
 タイタンは昨年11月にトップになった。

 今回のランクのファクトをもう少し。
 1ペタフロップス以上のコンピューターは現在26台あり、前回の23台を上回った。
 54台のマシンは能力を上げるためにエヌビディア、AMD、インテルなどのグラフィックス・プロセッシング・ユニット(GPU)を使っている。
 この数は前回の62から減少した。

 米国は世界最速のコンピューターを持っていないかもしれないが、合計したスパコンの能力では世界一だ。
 TOP500のマシンのうち252台は米国で、欧州112台、中国66台、日本30台の順。
 欧州の国別では英国29台、フランス23台、ドイツ19台となっている。

 TOP500は独マンハイム大学のハンス・モイアー氏、米ローレンス・バークレー国立研究所のエリック・ストローマイアー、ホースト・サイモンの両氏、テネシー大学のジャック・ドンガラ氏が毎年2回まとめている。


日本経済新聞 2013/6/18 6:30
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK17049_X10C13A6000000/

 スパコン世界一は中国の「天河二号」に

 世界の高性能コンピュータのランキングを取りまとめているTOP500プロジェクトは2013年6月17日、最新のランキングを発表した。
 それによれば、1位は中国人民解放軍国防科学技術大学(NUDT)が、2013年末までに中国広州市に設置することを目指して開発中の「Tianhe-2(天河二号)」となった。
 浮動小数点演算速度(FLOPS)は、TOP500のLinpackベンチマークで33.86Peta FLOPS(PFLOPS)である。

 2位は、米国エネルギー省(DOE)傘下の米Oak Ridge National Laboratory(ORNL)に設置された米Cray製の「Titan」(Linpackで17.59PFLOPS)。
 3位は、DOE傘下の米Lawrence Livermore National Laboratory(LLNL)に設置された米IBM製「Sequoia」(同17.173224PFLOPS)だった。
 理化学研究所などの「京コンピュータ」(同10.51PFLOPS)は4位だった。

■Intel製22nm世代のプロセサ利用システムが初の1位に

 発表によれば、天河二号の総CPUコア数は312万コアで、演算容量は54.9024P(ペタ)TFLOPS、メモリ容量は1.024Pバイト、消費電力は冷却システムを含めない場合は17.808MW、含めた場合は約24MWである。

 システムは1万6000枚の計算ノードからなる。
 1計算ノードは、「ネオ・ヘテロジニアス構成」と呼ぶ構成で、2個のマイクロプロセサ「Xeon E5-2692」と3個のコプロセサ「Intel Xeon Phi」などから成る。
 Xeon E5-2692は22nm世代のTri-Gateトランジスタを利用し、2.2GHz動作で12CPUコアを備える。
 マイクロアーキテクチャは、「Ivy Bridge」である。
 一方、Xeon Phiはやはり22nm世代で、1個で57CPUコアと多数のコアを備える。
 しかも各コアが倍精度の浮動小数点演算を4スレッド実行できる。

 計算ノード間をつなぐインターコネクトでは、SPARCアーキテクチャのプロセサ「Galaxy FT-1500」を利用した「Express-2」というNUDT独自の網構成を採っている。

(日経エレクトロニクス 野澤哲生)

[Tech-On! 2013年6月17日掲載]



サーチナニュース 2013/06/18(火) 08:11
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2013&d=0618&f=national_0618_001.shtml

【中国BBS】中国スパコン世界一「2位じゃダメ?」「食えねぇ」

  世界のスーパーコンピューターの性能を比べる専門家のプロジェクト「TOP500」が17日、最新の計算速度ランキングを発表し、中国の国防科学技術大が開発した「天河2号」が日本の「京」などを抜いて世界一に。
 中国の1位は2年半ぶりだが、計算速度は1秒間に3京3862兆回と、2位以下を圧倒する速さだった。
 こんなニュースが世を駆け巡った日、中国検索サービス大手「百度」の掲示板に
 「天河2号が世界一だってよ。何に使ったらいいと思う?
というスレッドが立ち上がった。

  スレ主は自称、山東省在住の20代男子。
 スパコンにとても詳しいというわけでもないが、興味は持っているといった感じのようで、「使い方」は
 「原爆や2万年後までの気候変動のシミュレーション、衛星のコントロールとかかな?」
と例を挙げた。

  これに対してほかのユーザーたちのコメントは、

「とりあえず、食えねぇな」
「地震の予測とか?」
「食べ物の成分分析に使う」
「それ何? 聞いたことねぇな」

  と、「あんまり興味ないんですけど」感が漂う。また、

「そんなにお金かけて……。2位じゃダメなんですか? そのお金、国民の生活向上に充てたらいいんじゃないですか?」
「早く実生活で役に立つといいな」
中国がこれからどうなるかを予測するのが一番いい

  と、「遅れていると思われるのが何より嫌」という中国の体制をちくりと批判する声もあった。

  中国のスパコンは天河2号の前の世代の「天河1号」が2010年11月に世界一となり、天津市にあるスパコンセンターで同年に実用化された。
 石油探査やバイオ医薬、アニメ・映画の特殊効果、高級設備製造、地理情報などの分野で使われていて、これまでに国内外600以上の組織が使用したという。

  天河2号の研究員は、
 「われわれは世界で最も性能が高く、安定的で応用範囲の広いスパコンを作り出した」
と強調し、
 「スパコンの急成長が中国のハイテクやイノベーション、経済と社会の発展を促している」
と自慢げだ。
 しかし「貧富の差」「身分の差」が大きい中国の一般市民では、
 「スパコンにかけるお金がそんなにあるなら、ほかに回したら?」
という気持ちは日本の某元大臣以上だろう。



IBT Times 2013年6月17日 18時17分 更新
http://jp.ibtimes.com/articles/45459/20130617/1371460664.htm

インタビュー:「京」後継機で世界トップ級のスパコン必要=理研・井上氏

 スーパーコンピューター「京」の開発キーマン、理化学研究所計算科学研究機構の井上愛一郎・統括役はロイターのインタビューに応じ、「地球温暖化などいろいろな問題が起きている中で、人類が地球上で生き延びるために、スパコンはなくてはならない道具だ」と語り、開発継続の意義を強調した。

 毎秒1京(1兆の1万倍)回の演算能力を持つ京は、2011年6月と同11月に世界一を達成したが、その後、世界3位に後退。
 17日には中国の「天河2号」の世界一が発表され、京は4位に順位を下げた。
 日本政府は、京の100倍の性能を持つ後継機を20年をめどに稼働させることを目指す方針で、理研は開発候補に挙がっている。

 井上氏は後継機について、
 「世界トップクラスを目指さないと、最先端のアプリケーションの成果が期待できない。
 (世界から遅れると)スパコンの、ではなく産業競争力に影響する」
などと語り、世界のトップ集団に留まるよう官民で注力すべきとした。
 同氏はまた、日本のスパコン開発は、軍事目的がある米国や中国とは一線を画して、平和利用に存在意義があるとの考えを示した。

 インタビューの主な内容は次の通り。

  ──京の開発では、事業仕分けで民主党の蓮舫参議院議員による「2位じゃだめなのか」という問いかけが有名になった。
 どれだけ低コストで作るのかというのも性能の一つでは。

  「京の開発費は、2006年から12年6月までの足掛け7年で1111億円。
 定常的な予算(邦貨で年間1500億円程度)を計上するアメリカに比べ、1年間にならすと日本の投資額は小さい。
 アメリカにおける継続的な取り組みに比べると、(日本は)どうしても弱さが出る」

  「CPU(中央演算処理装置)からOS(基本ソフト)、ミドルウエア、アプリケーションまで含めて国産でできるのは日本とアメリカだけ。
 中国は、自国で全て開発するマシーンと、アメリカから(部品を)買ってきたものを並べるマシンを両方、開発していて、純国産でできるようにしたいと思っているようだ。
 米中では(スパコン開発は)国家安全保障の領域。
 日本だと(政治家や国民の)賛同を得ないと国のカネも出ない」

  ──NECと日立製作所が2009年に京の開発から離脱したが、当時は両社とも経営状況が良くなかった。
 (富士通を含む)日本のスパコン開発を担ってきた3社で事業の「選択と集中」が続く中で、研究開発投資は国が負担すべきか、民間がもっと頑張るべきか。

 「スパコンは常に新しい概念が出てくる。
 5年後、10年後にどうなるかわからない。
 企業に1000億円規模の莫大な投資ができるかといったら、今後も無理だと思う。
 ただ、ある程度の将来像を描いて、(官民で)一緒に本来もっと進めていくべきではないか。
 やがては民需として市場が活性化され、京を開発した富士通(理研と共同開発)にも還元されていくような形になれば理想的だが、そうしたサイクルに入れていないのが実情だ」

 ──スパコンで世界一を達成することも大事かもしれないが、それを使い尽くすことも重要だ。
 京はどれくらい使われているのか。

 「システム全体が動いている稼働率は97%くらい。
 (全体で約9万個ある)CPUが実際に動いている時間の割合は7―8割になる。
 24時間稼働の中でCPUの使用率が高い状態で、大規模なシステムが安定して動いているということ、これはインフラに求められる条件といえる」

 ──京ではないとできない計算とは。

 「(京活用の)戦略5分野というのがある。
 医療・創薬もその中の一つ。
 よく引き合いに出すのが『心臓シミュレーター』。
 人間の心臓を再現するようなシミュレーションを京の上で実行して、新しい知見を見つけるというもので、最適な手術を個人ごとに準備することができる。
 これは臨床応用に向かって進みつつある」

 ──政府は、2020年稼働を目指して京の100倍の演算能力を持つスパコン次世代機を開発する方向だ。

 「まだ(正式な)オーソライズの手前の段階だが、ポスト京のマシーンを開発する候補として理研が挙がっているのは確か。
 20年に1エクサ(10の18乗=100京)というのは、いまのトレンドを伸ばしていけば見えている。
 このトレンドから外れると、間違いなく(日本の)地位は低下する。
 トップクラスを目指さないなら、最先端のアプリケーションの成果は期待できない。
 5年後、10年後に普及したときに、スパコンの、ではなく産業競争力に影響する」

 「(後継機の開発で)トップクラスと言っているのは、アプリケーションでの成果に重点を置いた上でのはなし。
 世界一の成果を出せるインフラにしたい。
 地球温暖化などいろいろな問題が起きている中で、スパコンしか解く道具はない。
 人類が永らく生き延びるためには、スパコンはなくてはならない道具になる」

 ──将棋の現役プロ棋士がコンピューターとの対局で敗れたニュースが話題になった。
 そう遠くない将来に、人工知能が人類の能力を抜かすだろうと主張する声も聞かれる。

 「人間には到底達成しえないような冷静、的確な判断はコンピューターのほうが遙かに上になる。
 それを実証したのが将棋の例だ。
 いろいろな定石をコンピューターに覚えさせて大局的な判断ができるようになった。
 分野を特定すればコンピューターのほうが能力が上だ」

 「(核兵器の管理用にも使わる米スパコンの)セコイアは、核のカーテンの向こうに消えていたと言われている。
 京の利用は、(誓約書を求める)平和利用だ。
 日本では超高齢化が進み、経済力、産業競争力の凋落がすさまじい。
 これをもう一度持ち上げるための道具、インフラとしてスパコンのニーズがあるという点で、日本は最右翼になる。
 世界がびっくりするような成果を出して広げていきたい」

 井上愛一郎氏:1980年東大工学部船用機械工学科卒、1983年富士通入社。
 2008年に同社次世代テクニカルコンピューティング開発本部長に就任、同社と理化学研究所が共同開発した「京」の開発を指揮。
 12年富士通フェローを経て、13年から現職。今春、紫綬褒章を受賞。



レコードチャイナ 配信日時:2013年6月18日 19時30分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=73449&type=0

世界スパコンランキング、日米中が三つ巴に―中国メディア

 2013年6月18日、中国製スパコンの計算速度が2年半ぶりに世界一に返り咲いた。
 スーパーコンピューターの性能を比べる専門家のプロジェクト「TOP500」は17日、最新の世界スパコンランキングTOP500を発表した。
 中国人民解放軍国防科学技術大学が開発した「天河2号」が、33.86PFlopsの計算速度で、世界最速のスパコンになった。

 米エネルギー省の研究機関であるオークリッジ国立研究所が開発した「タイタン」は、17.59PFlopsの計算速度で、前回の首位から2位に順位を落とした。
 専門家は、
 「天河2号の計算速度は2位の2倍弱に達するため、中国は首位を1年以上キープする可能性がある。
 今後は中米日の3カ国のコンピュータが世界最速のスパコンの座を交代で占めるようになるだろう」
と分析した。

 同日発表されたランキングでは、米ローレンス・リバモア国立研究所の「セコイア」、理化学研究所の「京」、米アルゴンヌ国立研究所の「ミラ」が、3-5位を占めた。
 中国の「天河1号」は2010年に首位になったが、今回は10位にランクダウンした。

 米国は現在、世界TOP500のスパコンの過半数を占めており、圧倒的な優位を示している。
 中国からは65のスパコンが入選しており、昨年11月の72からやや減少したが、依然として2位をキープしている。
 以下、日本は30で3位、英国は29で4位、フランスは23で5位、ドイツは19で6位となった。

 専門家は今後新たなスパコン競争が行われると予想する。
 天河1号は2010年11月に首位になったが、半年後に日本の京にその座を明け渡した。
 その後、米国のセコイアとタイタンが首位を争奪し合った。
 中国科学院計算機ネットワーク情報センタースパコンセンターの遅学斌(チー・シュエビン)主任は、
 「天河2号の首位は一時的なもので、他国も投資を拡大し、すぐにより高速なシステムが登場するだろう」
と予想した。
 イリノイ工科大学コンピュータ学部主任の孫賢和(スン・シエンホー)教授は、
 「日本の科学者は高性能計算会議で、天河2号を上回るコンピュータを作ると表明した」
と述べた。

 「TOP500」は1993年より毎年2回にわたり、この世界で最も権威あるスパコンランキングを発表している。
 同ランキングはLinpackと呼ばれる実測速度を基準とし、全世界のスパコンの格付けを行っている。

(提供/人民網日本語版・翻訳/YF・編集/TF)





【気になる-Ⅴ】


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