2013年11月23日土曜日

貧困国支援に動く日本の医薬品会社汝与えよ、さらば与えられん



JB Press 2013.11.23(土)  The Economist
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/39258

貧困国支援に動く日本の医薬品会社汝与えよ、さらば与えられん
(英エコノミスト誌 2013年11月16日号)

 日本の製薬会社が貧しい人たちの病気を治すことに投資する。

 日本の製薬会社は独創性に溢れた集団だ。
 2005年から2008年にかけて、日本より多くの新薬を開発したのは、米国と英国の製薬業界だけだった。
 だが、貧しい人たちの病気を治すことにかけては、日本企業の実績はそれほど良くない。

 非営利団体(NPO)のアクセス・トゥー・メディスン・ファウンデーションは、発展途上国の患者のために尽くす製薬会社の努力を追跡している。
 製薬大手20社のランキングでは、最下位6社のうち4社を日本企業が占めている。

 そうした状況が変わるかもしれない。
 11月8日、グローバルヘルス技術振興基金(GHIT)はマラリアと結核とシャーガス病(不気味で人の血を吸うサシガメを介して広まる病気で、死に至る可能性があり、多くの場合、衰弱をもたらす)の治療を促進させるための初の助成金交付を発表した。
 今年設立されたGHITは官民パートナーシップで、アステラス製薬、第一三共、エーザイ、塩野義製薬、武田薬品工業という日本の製薬会社5社が参加している。

 低所得国の医薬品へのアクセスを制限しているという製薬会社に対する批判は千年紀の変わり目にピークに達した。
 人の命を救うHIV治療薬のメーカー数社が、アフリカの患者に手頃な価格で薬を提供することを拒んだことがきっかけだった。
 その結果生じた激しい憤りを受け、製薬会社は方針の見直しを余儀なくされた。
 現在、大半の大手医薬品メーカーは自社を、ともに伝染病と戦う盟友として売り込んでいる。

■GHITが試みる新たなモデル

 それは時として、薬を寄付したり、ジェネリック医薬品のメーカーへの技術ライセンスの供与を意味する。
 また、それ以外のケースでは、新たなワクチンや治療の共同開発を意味する。

 例えば、アクセス・トゥー・メディスン・ファウンデーションの指標で1位にランクされている英グラクソ・スミスクライン(GSK)は来年、規制機関にマラリアのワクチンの認可を求める。
 ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団(同財団はGHITファンドのパートナーでもある)がこの新薬の開発に資金を提供した。

 GHITファンドでは、日本企業5社は少々異なるモデルを試している。
 各社は5年にわたってそれぞれ年間100万ドルを拠出する。
 ゲイツ財団と日本政府からの投資と合わせると、ファンドは1億ドルを超える。

 この資金は、日本と外国の機関のパートナーシップに分配される。
 例えば、大阪大学とウガンダのグル大学の研究員たちは、提案されている別のマラリアワクチンの有効性を高めるために73万5000ドルを受け取る。

 同じようなすべての試みと同様、GHITにとって重要な問題は、新しく作られた薬がいくらになるか、だ。
 GSKは製造原価に5%を上乗せした金額でマラリアワクチンを販売する予定で、その利益は伝染病の研究に当てられるという。

 それでも、一部の提唱者はまだ価格が高すぎるのではないかと心配している。
 元エーザイ幹部で、現在GHITファンドを率いるB・T・スリングスビー氏は、同ファンドの研究プログラムで開発された医薬品は、最貧困国ではロイヤルティなしでライセンス供与されると話している。
 その他の市場では、概ね収支トントンを目指すという。

■いまの援助が将来の利益に

 しかし、これらの企業の善行は長期的な見返りを得られるかもしれない。
 日本勢はしばらく前から、海外で存在感を高めようとしてきた。
 武田薬品は2011年にスイスの医薬品メーカー、ナイコメッドを約140億ドルで買収した。
 2008年には第一三共が50億ドル近く投じ、インドの薬品メーカーのランバクシーを買収したが、ランバクシーはその後、安全性の問題に苦しめられている。

 それと比べると、GHITファンドはずっと小規模で、物議を醸す可能性の低い投資となる。
 だが、日本企業が米国や欧州の一流研究機関と関係を構築し、ゆくゆくは日本の医薬品ブランドを新興国市場の患者と保健省に広めることに役立つだろう。
 いまの援助は将来の利益につながるかもしれないのだ。

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英エコノミスト誌の記事は、JBプレスがライセンス契約 に基づき翻訳したものです。
英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。




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